私たちの作っている車輌運搬車は1階フロア、2階フロア合わせて約10~15のフロアで構成される。
車枠を作る人、それぞれのフロア担当に別れ、溶接作業をしながら組み上げていく。
私たちの属している「特装車事業部」の作る車は、ハタラククルマ。
「高所作業車」はぐんぐん高いところへ上がっていくし、「拡幅車」は室内が倍ほど広くなる。
この車輌運搬車も1階も2階も載せるクルマの種類に合わせてフロアごと上下に動く。
動くからこそ、他の部品との絡みがあり、正確なモノが要求される。
組立の際、寸法チェックをするのに、「対角をとる」という作業がある。
同じ幅、長さであれば、対角をとり、同等であれば直角が出ている。と言う仕組み。
つまり、確実に正確。毎日の作業で欠かせない。
10~20メートルほどある車輌でも、対角が1ミリでも狂って組み立てる始める事はまず無い。
溶接後、金属が縮んだり、ひずむ事があっても3ミリ程度。

ところが今日、その対角の差が驚きの60ミリも違うという「2階後フロア」が出来ていた。
担当はこの道30年のベテラン。
几帳面な正確で、人があきれるほど寸法チェックをする人。
少々複雑な形だった為に、いつもより余計に何度も計ったのだと言う。
このベテランさんが見間違いしたとは思えないし、そこまで歪みが来るとも思えない。
とにかく60ミリなんて「魔物が取りついた」としか考えられないのだ。
結局、製品にならない為、ガスやプラズマ切断機での解体作業を夕方より始めたが、
いったい何故こんな事になったのか、謎を解きあかしたい。